▼矯正歯科医院を選ぶ際に考えて頂きたいこと
現在、全国には約2万軒(歯科医院の約3割)が矯正歯科を標榜しています。
その数ある歯科医院の中から安心して治療を受けられる医院を選ぶことは決して簡単なことではありません。
数件の医院へカウンセリングに行かれた方は既に分かると思いますが、病院によっての雰囲気や応対が様々であることはもちろんのこと、治療方針や使用する装具、費用、始めるタイミングが異なり、逆に困惑してしまうこともあると思います。
だからと言って考えるのをあきらめてしまい、近いからという理由や虫歯治療から矯正治療まで一カ所でできるからという安易な理由で決めてしまうのも良くありません。
矯正治療は全ての永久歯を移動して噛み合わせを大きく変え、理想的な状態に仕上げていく治療です。
ですので、劇的な変化が期待できる反面、高い技術力が求められる治療であると言えます。
お子様の場合には、そこに顎の成長発育が加わりますので、更に複雑な治療といえます。
そのため安心できる矯正治療を受けるには、卒後研修以降、他の一般歯科医療は行わずに集中して専門的な矯正技術の習得をしている矯正専従の歯科医師が良いと考えます。
▼矯正歯科治療を受ける際、実際に何を目安に選択をすればよいのでしょう?
私は以下の点に注意することを提案します。
- 1.専門医を取得している
矯正の専門教育を受けている先生を選択するのは最低限必要なことだと思います。
できれば(認定医以上の)専門医を取得している先生がよいでしょう。
私の知り合いで認定医、専門医を取得していないけれども腕の良い先生はおります。
ただ、そのような先生をご存じないのであれば、専門医を取得している先生のほうが安心ではないでしょうか。
- 2.診療日数が十分にある
矯正治療は月に1回程度の来院間隔で治療は進んでいきます。
ですので、診療日数が月に1回程度でも治療は問題なくできると思います。
ただ、矯正医が常勤しておらず、スタッフの技量があまり無い場合に 装置が壊れた時などの対応が不十分になる恐れがあります。
安心して治療を受けたいのであれば矯正専門の歯科医院をお勧めします。 - 3.診断時の資料が整っており、説明をしっかりとしてくれる
矯正治療をする前に精密検査を行います。
レントゲン撮影(セファロとパノラマ)、顔と口腔内写真撮影模型採取は診断に必要な資料であり、状況に応じて他のレントゲン写真撮影、CT撮影なども行います。
診断に基づく治療方針が明確だと、治療期間や治療費用もおのずと明確になります。
逆に術前の治療方針やそれに基づく治療期間や治療費用が不明確にしか伝えられない先生は立案するための知識と経験が不足しているかもしれません。
また、私は患者様に治療方針をご理解いただくよう丁寧に説明をするのも術者の重要な責務と考えます。 - 4.情報の開示をしっかりしている
診断、治療方針の説明は情報量が多くなりますので、その内容を記載した資料の配布は最低限必要だと考えます。
それ以外にも、治療中の口腔内写真を記録している歯科医院は状況把握をスタッフも含めてしっかりと行っているところが多いので、より安心です。
また、そのような情報を積極的に開示している医院は腕に自信があると思いますので更に安心だといえます。 - 5.院内が清潔である
矯正専門医に限ったことではありません。
医院を清潔に保てないような先生は医療者としての意識が低いため治療の質も良くないところが多いように思います。
院内が不潔で腕の良い先生はまずいないと考えます。 - 6.治療中の説明が丁寧である
その医院に通院中のお知り合いがいたら、ぜひ治療中の説明状況をお聞き下さい。
熟練された先生は処置による歯の移動やそれに対する患者さんの反応が予測できるため質問を受ければ的確に回答できますし、患者さんを大切にしている先生であれば聞かれる前にしっかりと説明を行います。
矯正治療を受診する方の多くは、矯正が初めてであり、説明が不足していると些細なことでも不安になってしまうと思います。
それを払拭するため、処置内容やそれに伴う歯の反応を丁寧に説明する義務が医療者側にはあると思います。
経験値の低い先生は治療予測ができないため、うまく説明できないこともあると思います。 - 7.診療時間を確保している
月に1、2回の診療日だけでは、患者様1人あたりの診療時間を十分に確保することが困難なように思います。
もちろん矯正治療の処置には1、2分程度で行えるものもあります。
保定装置のチェックや生え変りの確認などもそれほど時間はかかりません。
しかし非常に混雑した医院ですと、正しい手順の一部を省略したり、説明がおろそかになってしまうこともあるように思います。
これは初診相談時に、他の患者様と医院のやりとりや、動きをよく観察しているとよくわかります。 - 8.治療費用が妥当な金額である
保険診療とは異なり矯正治療は自由診療なので、医院によっての料金設定が異なり、支払い方法も様々です。
ただ、やはり相場というものが存在しており、永久歯列期の本格矯正治療費用はおおよそ80万円前後となっています。
治療費用の一括支払を求められるトータルフィー設定、使用する装置によって料金設定が細分されているような料金設定。
どちらが良いのか一概にはいえないように思います。
ただ、平均以上のあまりにも高額な料金設定はおかしいように思いますし逆に安すぎても治療の質が心配になってきます。
しっかりとした治療を行うためにはそれなりのコストがかかりますので、おおよそ相場の料金設定をしている医院が妥当だと考えます。 - 9.スタッフがそろっている
矯正歯科医院に限らずですが、歯科衛生士は常勤しているほうが良いように思います。
矯正治療を行う上でドクターのみが筋機能訓練、歯みがき指導、クリーニングまでもしっかりと行うことは困難でありますし、歯科医師だけが行うのではなく歯科衛生士に任せたほうが患者様と歯科医院の関係がよりうまくいくこともあるように思います。
矯正治療は成人の方でも4、5年、小児から始めた場合はもっと長期間の通院が必要になるでしょう。
矯正治療を受ける歯科医院を探す際に前述のポイントを踏まえて病院探しをして頂き信頼できる先生と巡り会い、安心できる後悔しない矯正治療を受けられることを祈っております。